2022年6月25日
文通とSNS
あらためて文通とSNSを比較しながら、文通の魅力について考えてみたいと思います。記事の最後には、文通専門サービスを運営する立場としてSNSをどう捉えているのかということも書いてみました。
そもそも、文通やSNSがしたくなるのはなぜ?
私たちはどうして、文通やSNSがしたくなるのでしょうか?
共通するのはおそらく、人とのつながりを感じて、人とのやりとりを楽しみたいという気持ちですよね。 もちろん人によっては(楽しむためではなく)仕事上の必要があってSNSを使うケースなどもあるとは思うのですが、今回はそのようなケースは除いて、文通とSNSについて考えてみます。
文通とSNSを比較してみた
さて、文通とSNSの違いを表にしてみました。 こうしてみるとあらためて、それぞれのよさがありますね。
文通(手紙を郵便でやりとり) | SNS(文字などのデータをインターネットでやりとり) |
手紙を書き上げて発送するのに、時間と手間がかかる。つまり、 ・相手のことをじっくり考える。 ・送る数や受け取る数がSNSほど多くない。 | 文字などを入力して送信するのに、時間や手間がかからない。つまり、 ・効率よく、さっと送る。 ・無数に送ったり受け取ったりする。 |
直筆の文章やイラストを書いた手紙でやりとり。つまり、 ・文字が基本的に手書き。 ・手紙に実体や手触りがある。 ・もらった手紙は世界にひとつだけのもの。 | 文字や画像を入力してスマートフォンなどでやりとり。つまり、 ・文字が基本的にフォント。 ・文章や画像は画面上で簡単に見られる。 ・もらった文字や画像は簡単に複製可能。 |
郵便で送る。つまり、 ・(レタレタなどを利用しない場合は)自宅の住所や本名を相手に教える必要がある。 ・自宅の郵便受けに手紙が届く。 | インターネットで送る。つまり、 ・自宅の住所や本名を相手に教える必要がない。 ・スマートフォンなどに通知が来る。 |
相手からの手紙が届くのに時間がかかる。つまり、 ・ゆったりとしたやりとりになる。 | 相手からの返信が届くのにかならずしも時間がかからない。つまり、 ・効率のいいやりとりになる。 |
あなたにとって心地いいやりとりとは?
上の表を眺めながら考えてみました。
まず、人とのやりとりを楽しむ方法として(文通よりも)SNSが圧倒的に普及しているのは、やはり効率と手軽さのためなんだと再認識しました。 だれしも特に理由がなければ、手間は少なければ少ないほどうれしいものですし、できるだけ時間のかからない効率的な方法を選ぼうとするものです。
人は、ほかの人とのやりとりを求める生き物ですから、それを極めて効率的に実現できるとなれば、多くの人がSNSを楽しむのも納得です。
そんなSNSの普及したいま、文通好きの私たちは、なぜこれほどまでに文通を楽しく思うのでしょうか。 そこには、いくつかの要素があるように感じます。
まずは、「SNSではやりとりのペースが早すぎる」「人とのやりとりをもっとゆっくり楽しみたい」という気持ちです。 文通では、手紙を書いたり発送したりするのに手間や時間がかかりますし、相手からの手紙が届くまでの日数もかかります。 このゆったりとしたペースが、私たちを安心させてくれるのだと思います。 これに似たものとして、私たちには「やりとりする人の数が多すぎると疲れてしまう」「限られた人ともう少し深くやりとりしたい」という気持ちもありそうです。
もうひとつは、「データのやりとりとは違って、手で実際に触れることのできる手紙がもらえてうれしい」「手書き文字の温もりがうれしい」「こだわりの詰まった手紙の一通一通が、大切な作品のように感じられる」という気持ちです。 この気持ちの背景には、「SNSでのやりとりだけでは無機質すぎる」「かといって、実際に人と会って対話するのは、なにかと大変だし距離感が近すぎる」というような感覚がありそうです。 だからこそ私たちは、手紙を介することで生まれる適度な距離感や人の温かさに惹かれるのかもしれません。
ちなみに個人的には、文通という世間の人があまりやっていない古風な活動をしているということ自体も、実は楽しんでいます。 粋で密かな趣味という感じがするので、文通をしている自分が少し特別に思えてうれしくなります。
文通専門サービスを運営する立場として
最後に、文通専門サービス「レタレタ」を運営する立場としてSNSをどう捉えているのか、ということも述べてみます。
レタレタを運営する目的は、少しでも多くの人に手紙や文通の楽しさを感じてもらうことです。 文通には、ほかにはない独自のすばらしい魅力があると確信しています。
それではSNSをよくないものと捉えているかといえば、決してそんなことはありません(レタレタ自身も Twitter や Instagram を活用して情報発信しています)。 また、かならずしもすべての人にとって文通が楽しいものとは限らないことも、理解しているつもりです。 大切なのは、自分にあったバランスで文通とSNSをうまく使い分けることなのだと思います。
手軽で効率的なやりとりだけで満たされることのできる人や、文通のゆったりとしたペースがつらくなってしまうような人であれば、文通ではなくSNSで人とのやりとりを楽しむのが幸せです。 逆に、適度な距離感とゆったりしたペースで人とやりとりすることで、気持ちが満たされたり穏やかな気持ちになれたりする人には、ぜひ文通を楽しんでいただけたらと考えます。
今回、SNSと比較してみることで、文通の楽しさを少し具体的な言葉にできた気がします。 みなさまも引き続き、楽しい文通生活をお送りいただけましたら幸いです。